肥満にかかわる脂肪細胞3種類:白色・褐色・ベージュの役割
肥満とかかわりの深い「脂肪細胞」は、実は3種類あることをご存知ですか? 今回は、それぞれの特徴や役割、肥満とのかかわりなどについてみていきます。
脂肪細胞とは
脂肪細胞は余分なエネルギーを貯蔵する細胞で、体の飢餓状態に備えるためにできたシステムの一つといわれています。
人類の長い歴史を見てみると、人間はほとんどの時代を飢餓に立ち向かいながら過ごしてきました。脂肪細胞は、少ないエネルギー量で生き抜くために、エネルギーを蓄えるために生まれたものです。現代は飽食の時代といわれるようになりましたが、過去の飢餓の時代からみれば、ほんの短い時間にすぎません。
人間の体は食事によって余ったエネルギーを、脂肪細胞に蓄え続けており、肥満や生活習慣病などの健康問題を引き起こす原因になっています。
脂肪細胞の種類とそれぞれの特徴
脂肪細胞というと余ったエネルギーを蓄える細胞だと認識されていましたが、近年、脂肪細胞にもいくつか種類があることが明らかになりました。
脂肪細胞は、以下のように3種類に分けられます。
●白色脂肪細胞
脂肪細胞として多くの人がイメージするのが、白色脂肪細胞です。
白色脂肪細胞は、食事で摂りすぎた余分なエネルギーが中性脂肪となり、脂肪細胞に蓄えられるものをいいます。これまで、白色脂肪細胞は成人以降は数が増えずに、細胞が大きくなるだけと考えられていましたが、最近になって数が増え続けることが明らかになりました。
白色脂肪細胞が大きくなりすぎて、体重が増えた状態を肥満といいますが、男女の性別によって、つき方に傾向があります。
- 男性……リンゴ型肥満。内臓周りに白色脂肪細胞がつく。
- 女性……洋ナシ形肥満。皮膚の下に白色脂肪細胞がつく。
特に、生活習慣病やメタボリックシンドロームを引きおこしやすいのが、リンゴ型肥満です。
●褐色脂肪細胞
褐色脂肪細胞は、首筋から肩甲骨にかけて存在するとされる脂肪細胞です。
褐色脂肪細胞は、脂肪の燃焼にかかわるミトコンドリアを豊富に含んでおり、脂肪を燃焼させてエネルギーを作る働きをしています。以前までは、褐色細胞は生まれたての赤ちゃんだけに存在すると考えられていましたが、近年になって成人にも存在していることが明らかになりました。
脂肪を燃やす働きのある褐色細胞は、肥満を解決するものとして研究が進められています。
●ベージュ脂肪細胞
脂肪細胞は大きく分けて、白色脂肪細胞・褐色脂肪細胞の2種類があるとされていましたが、近年になってもう一つの脂肪細胞の存在が明らかになっています。この三番目の脂肪細胞はベージュ細胞と呼ばれています。
白色脂肪細胞に混じって存在する褐色脂肪細胞様の細胞で、熱の産生を促すことが明らかになっています。ベージュ細胞が作用する仕組みについては、まだ明らかになっていない部分が多く、研究が進められています。
最近の研究では、長期的に寒い環境が続くと、ベージュ細胞が白色脂肪細胞の脂肪燃焼のスイッチを入れる働きがあることが明らかになっています。ベージュ細胞は、褐色脂肪細胞と同じように、肥満問題の解決の糸口として、注目が集められています。
まとめ
肥満と密接なかかわりのある脂肪細胞は、いくつかの種類があります。脂肪細胞というと、脂肪の貯蔵庫のように思われがちですが、近年になり、褐色脂肪細胞やベージュ細胞の存在が明らかになっています。
脂肪を燃やして熱を産生する働きのある褐色脂肪細胞やベージュ細胞は、将来の肥満問題の解決につながる可能性を秘めており、今後も注目していきたいですね。
【記事監修】看護師:原 明子
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