イギリスの睡眠障害の治療方法や対策 ②薬やサプリメント
前の記事でイギリスの子供の睡眠障害が深刻であることをお話しました。そして子供だけではありません。睡眠障害は、イギリスでは国民全体の問題となっています。そこでNHS(国民保険サービス)では、この問題に対して治療方法や対策を次のような方法で進めています。前の記事で医療機関における治療法をご紹介しましたので、続けて市販の薬やサプリメントについてお話します。
睡眠障害の対策や治療方法②薬やサプリメント
イギリスにおける睡眠障害の対策や治療は次のような順番で進みます。
医療機関において、1.良い睡眠のアドバイス、2.認知行動療法、3.睡眠薬の治療が行われ、それ以外では自分薬局などを通じて(医師のアドバイスに基づいて)次のような薬やサプリメントで対策を進めていくことができます。
4.市販の睡眠薬やサプリメントによる対策
・ベンゾジアゼピン類
ベンゾジアゼピンは、不安を軽減し、静穏、弛緩および睡眠を促進する処方薬です。重度の不眠症や極度の苦痛を引き起こしている場合、GP(かかりつけ医)は短時間処方することがあります。ベンゾジアゼピンには、テマゼパム、ロプラゾラム、ロメタゼパム、ジアゼパムおよびニトラゼパムなどの成分が含まれています。ベンゾジアゼピン類は依存性が高いので長期の使用は推奨されていません。翌日に眠気やめまいを感じたり、集中力や意思決定の低下、うつ症状、感情的な麻痺、過敏症、居眠りなどが生じることもあります。
・Z薬
Z-薬は、ベンゾジアゼピンと同様に作用する新しいタイプの薬です。ザレプロン、ゾルピデムおよびゾピクロンが含まれています。ベンゾジアゼピンと同様に、Z薬による長期間の使用は推奨されていません。通常、最長で2〜4週間程度が良いとされていて、眠気、めまい、感情的な障害、下痢、いびき、口の渇き、混乱などの副作用があります。稀に妄想、悪夢、幻覚などの精神的反応を引き起こすこともあります。
・メラトニン(サーカディン)
55歳以上の成人にメラトニンは処方されます(以前の記事で子供と55歳以上の人への処方が10年で10倍にも増えたと伝えました)。メラトニンは、睡眠障害を緩和するために数週間程度用いられることがあります。メラトニンは、睡眠サイクルを調節するホルモンです。最初は3週間使用して、その後症状に応じて最高13週間まで継続することができます。メラトニンには、頭痛、風邪、背中の痛み、関節痛が起こることがあります。抗うつ薬、抱水クロラール、クロメチアゾール、バルビツール酸塩、ハーブ療法(バレリアン抽出物等)との併用はできません。メラトニンは他の薬に比べると効果は弱いですが、副作用等の心配が少ないことが特徴です。そのため、イギリスでは子供にも処方されることが増えています。
まとめ
以上が医療機関以外、あるいは医療機関のアドバイスにより行われる睡眠薬やサプリメントに治療です。先回の記事でもご紹介しましたように、ほとんどの場合は睡眠薬による治療が併用されています。メラトニンの処方はここ10年で10倍にも増えていることからもイギリスでも医師の処方、あるいは市販の睡眠薬、サプリメントを含め、かなりその使用が増えています。特にメラトニンは子供や高齢者にも使われているというからもその取扱いに注意です。日本でも、睡眠薬やサプリメントを使用されている人は増えています。今回ご紹介しましたように多くの副作用や可能性がある症状に注意して、使用上の注意を守り使用していくようにしましょう。
(文責:宮本燈)
次の記事でメラトニンの子供の睡眠障害への効果を紹介していますのでご参照下さい。
参考記事
BBC Sleep problems mounting in children by Jenny Kleeman, BBC Panorama, 4 March 2017
NHS Choices home pageYour health, your choices for insomnia treatment
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